そして4年後。
私はずっと資格を取り続ける日々を送っていた。
調理師免許とか食品衛生責任者の資格などを勉強して、試験を受けて資格を取得した。
何度か試験に落ちてしまって、その分時間もかかってしまったけど今はもう昔の私じゃない。
諦めずに資格を取得したのは、ハルと一緒にお店を開くって決めたから。
ハルも調理の勉強や栄養の勉強をしていると、連絡で言っていた。
正直、ハルは知らない食べ物や食材が多かったから、少し心配だった。
マコトさんはデザイン事務所で日々奮闘しているとメールが来ていた。
皆やりたいことに向かって頑張り続けたこの4年間。
そして、私は今あの通信制高校の近くにあるカフェに来ている。
皆が来るのを待ちきれなくて、時間よりも早く来てしまった。
「さき!」
先に来たのはハルで、相変わらず忙しそうに走ってきた。
前にもこんなことがあったっけ。
思い出し笑いをしていると、今度はマコトさんがやってきた。
黒いスーツを着て、デキる女性っていう感じだったから、見入ってしまった。
マコトさんは身長が高くて、ショートカットだから本当にカッコイイ。
「やあやあ、お待たせ!
皆あれから変わってないな~」
「マコトさんも相変わらずですね」
私達はそう言いながら、席に着きドリンクを頼んだ。
本当にみんないい意味で変わってない。
でも、少し歳を重ねてあの頃とは世界の見え方が変わってきていた。
皆で近況報告をして、懐かしい話もして盛り上がる。
そして、私はあの頃のアイデアノートを取り出した。
ハルもかつて提案していたお店の内装の紙を取り出して、マコトさんに見せた。
「実は、私とハルの二人でお店を出したいんです。
それで、もし良ければマコトさんにデザインしてもらいたいんです。
内装は懐かしい雰囲気が出ていれば、マコトさんのセンスに任せたいなって」
「え、あたしがデザインしてもいいのか?
こんな素敵な内装、あたしが実際に作っても?」
「私もマコトさんにお願いしたいんです。
さきとの夢だけど、マコトさんも協力してくれたらうれしいなって」
マコトさんに渡すと、マコトさんはにやりと笑った。
早速上司の人に連絡を入れて、確認を取ってくれている。
もうすぐ、私達のお店が出来上がるんだ。
マコトさんが電話を切り承諾してくれたことを教えてくれた。
これでまずは第一歩だよね?
「それで、どんなお店にしたんだ?」
「駄菓子バーがいいかなって思ったんです。
子供の頃駄菓子屋さんへ行ってお菓子を買って一緒に友達と食べたりした時のことを思い出して、また楽しめるように」
これはお父さんのアイデアなんだ。
お父さんは
駄菓子屋が好きでよく通っていたと話してくれた。
駄菓子屋があったらもう一度行きたい?って聞いたら行きたいなって言ってた。
大人が童心に返れるようなお店は、きっと他にもあると思う。
だけど、懐かしく感じてもらえるのはやっぱり駄菓子屋だと思ったんだよね。
それでね、駄菓子を食べ放題にするの。
もちろん、料金は先に600円くらいにしてチャージ制にしておく。
また、駄菓子だけではなくてちゃんとしたメニューも考えてあるんだ。
それは、学校給食に出されていたメニューを提供すること。
それを二人に伝えると、二人が賛成してくれた。
「さき、めっちゃいいアイデアじゃん!
駄菓子食べ放題で給食メニューが食べられるって、すごくいいと思う!」
「さき、すごい冴えてます!
私がお客だったら週に何度か通っちゃいますよ!」
「でね、そこで相談なんだけど・・・。
一番最初のお客さんは、お父さんにしてあげたいんです」
一番苦労を掛けてしまったお父さんを一番に招待してあげたい。
もちろん、代金は私がすべて負担するつもり。
それを二人に話すと、優しく笑って納得してくれた。
話を進めて、メニューも何を提供するのかみんなで話し合って決めていく。
そんなことをしていると、あっという間に夜遅くになってしまっていた。
マコトさんは明日も仕事があるから、先に帰ってもらった。
「さき、お店楽しみですね」
「うん、すっごく楽しみ!」
そんなことを話しながら、私達も帰路へ着いた。
今後、忙しくなりそう!
不安なこともあるけど、楽しみな気持ちの方が大きくて強い。
上手くやっていけるのか不安だけど、私ならきっと出来るから大丈夫。
そしてその1年後。
見事私とハル二人のお店が出来上がり、早速見に行った。
ハルが考えた内装にマコトさんが少しアイデアを足してくれて、すごくいい感じになった。
懐かしさもあってそれでも温かみのある暖色系の店内。
そんなに大きなお店ではないけれど、まるで教室みたいで懐かしかった。
って、私が懐かしがってたら意味ないよね!
「マコトさん、ありがとう!
想像以上でびっくりしちゃいました!」
「いやいや、ハルのデザインが良かったんだよ。
ほら、お父さん呼んであげなよ。
今日は開店前日祝いという事で、私も付き合うからさ!」
「マコトさん、ただ食べたいだけでしょ!」
「ばれた?」
「あははっ!」
皆で笑いながら、お店の準備をしていく。
明日から開店するつもりだったから、駄菓子もメニューの材料も揃っている。
綺麗に準備をして、私はお父さんに連絡を入れた。
場所が分からないって言っていたから、ハルに迎えに行ってもらう事に。
本当は私が行こうと思ったんだけど、さきは店長だからいいんです!って。
だから甘えることにした。
何だか緊張するな・・・お父さん、喜んでくれるかな?
―ガラッ
その時、ドアが開けられてお父さんとハルが入ってきた。
「いらっしゃいませ!」
私は明るく元気な声でお父さんに言う。
お父さんはすごくびっくりした表情をして、店内を見ている。
店内は駄菓子屋そのものだから、驚いてくれたのかもしれない。
お父さんがハルに案内されてテーブルにつく。
さっきから何も言わないけど、大丈夫かな・・・。
「これがお前の店なのか・・・いいじゃないか。
駄菓子屋みたいですごく懐かしい感じがして落ち着く」
「お店の一番最初のお客さんは、お父さんが良かったんだ。
今まで苦労ばかりかけてきたけど、これからは私が頑張るからね。
今日は好きなだけ食べていいよ!」
すると、お父さんが初めて涙を流した。
・・・お父さん?
お父さんが泣くから私まで泣きそうになってしまった。
メニュー表を出して、何が食べたいか聞いてみる。
すると、揚げパンとシチューの献立が食べたいと言ってくれた。
早速ハルが厨房でメニューを作り始めていく。
「父さん、嬉しいよ。
お前がこんな立派になってくれて。
あんまり無理して身体壊すなよ」
「うん、お父さんこそ身体壊さないでよね。
もう若くないんだから」
「馬鹿、父さんはまだ若いぞ」
「あははっ」
お父さんがそう言って笑うから、私も笑った。
喜んでもらえて本当に良かった。
今までとんでもないことをしてきたけど、無事今はこうして真面目に生きている。
ハルと出会えたことや、お父さんが通信制高校を進めてくれたからかもしれない。
メニューが運ばれてきて、お父さんの前に出されて隣の席にも出された。
・・・誰の分だろ?
すると、マコトさんに座るように言われて、お父さんの隣に座った。
「さき、せっかくだからお父さんの隣で一緒に食べなよ。
夕ご飯まだだったじゃないか」
「そうですよ、親子水入らずどうぞ。
私達は向こうにいますから」
「ありがとう」
二人が離れていき、私はお父さんと一緒に食べていく。
通信制高校に通ったことで、私は初めて勉強が楽しいと思えるようになった。
行事だって下らないとか思ってたけど、協力して一つの事をこなすことの大切さを知った。
部活だって一生懸命に頑張って、優勝することが出来た。
今思うと、私を成長させてくれたのは通信制高校だったのかもしれない。
「お父さん、通信制高校に行かせてくれて、ありがとう。
通ったおかげで、私すごく変われたような気がするんだ」
「そうだな、まるで別人みたいに変わった。
いい友達もいるみたいだし、本当に良かったな」
「うん!」
今まで見えてこなかったものが見えてきたおかげで、卑屈にならずに済んだ。
過ちを犯してしまっても、やり直せることを知ったから、もう大丈夫。
行き過ぎていなかったら、いつでも修復することが出来るんだ。
どうしよう、私今すごく幸せを噛みしめてる。
その後、私たちは無事お店を開けて毎日多くのお客さんを集めた。
毎日予約でいっぱいになって、リピーターも増えて忙しくも充実した日々を送ることになった。
皆さんも私のお店を見つけたら、ぜひ立ち寄ってくださいね?
20話 幸せってこんな近くにあったんだ
そして4年後。
私はずっと資格を取り続ける日々を送っていた。
調理師免許とか食品衛生責任者の資格などを勉強して、試験を受けて資格を取得した。
何度か試験に落ちてしまって、その分時間もかかってしまったけど今はもう昔の私じゃない。
諦めずに資格を取得したのは、ハルと一緒にお店を開くって決めたから。
ハルも調理の勉強や栄養の勉強をしていると、連絡で言っていた。
正直、ハルは知らない食べ物や食材が多かったから、少し心配だった。
マコトさんはデザイン事務所で日々奮闘しているとメールが来ていた。
皆やりたいことに向かって頑張り続けたこの4年間。
そして、私は今あの通信制高校の近くにあるカフェに来ている。
皆が来るのを待ちきれなくて、時間よりも早く来てしまった。
「さき!」
先に来たのはハルで、相変わらず忙しそうに走ってきた。
前にもこんなことがあったっけ。
思い出し笑いをしていると、今度はマコトさんがやってきた。
黒いスーツを着て、デキる女性っていう感じだったから、見入ってしまった。
マコトさんは身長が高くて、ショートカットだから本当にカッコイイ。
「やあやあ、お待たせ!
皆あれから変わってないな~」
「マコトさんも相変わらずですね」
私達はそう言いながら、席に着きドリンクを頼んだ。
本当にみんないい意味で変わってない。
でも、少し歳を重ねてあの頃とは世界の見え方が変わってきていた。
皆で近況報告をして、懐かしい話もして盛り上がる。
そして、私はあの頃のアイデアノートを取り出した。
ハルもかつて提案していたお店の内装の紙を取り出して、マコトさんに見せた。
「実は、私とハルの二人でお店を出したいんです。
それで、もし良ければマコトさんにデザインしてもらいたいんです。
内装は懐かしい雰囲気が出ていれば、マコトさんのセンスに任せたいなって」
「え、あたしがデザインしてもいいのか?
こんな素敵な内装、あたしが実際に作っても?」
「私もマコトさんにお願いしたいんです。
さきとの夢だけど、マコトさんも協力してくれたらうれしいなって」
マコトさんに渡すと、マコトさんはにやりと笑った。
早速上司の人に連絡を入れて、確認を取ってくれている。
もうすぐ、私達のお店が出来上がるんだ。
マコトさんが電話を切り承諾してくれたことを教えてくれた。
これでまずは第一歩だよね?
「それで、どんなお店にしたんだ?」
「駄菓子バーがいいかなって思ったんです。
子供の頃駄菓子屋さんへ行ってお菓子を買って一緒に友達と食べたりした時のことを思い出して、また楽しめるように」
これはお父さんのアイデアなんだ。
お父さんは
駄菓子屋が好きでよく通っていたと話してくれた。
駄菓子屋があったらもう一度行きたい?って聞いたら行きたいなって言ってた。
大人が童心に返れるようなお店は、きっと他にもあると思う。
だけど、懐かしく感じてもらえるのはやっぱり駄菓子屋だと思ったんだよね。
それでね、駄菓子を食べ放題にするの。
もちろん、料金は先に600円くらいにしてチャージ制にしておく。
また、駄菓子だけではなくてちゃんとしたメニューも考えてあるんだ。
それは、学校給食に出されていたメニューを提供すること。
それを二人に伝えると、二人が賛成してくれた。
「さき、めっちゃいいアイデアじゃん!
駄菓子食べ放題で給食メニューが食べられるって、すごくいいと思う!」
「さき、すごい冴えてます!
私がお客だったら週に何度か通っちゃいますよ!」
「でね、そこで相談なんだけど・・・。
一番最初のお客さんは、お父さんにしてあげたいんです」
一番苦労を掛けてしまったお父さんを一番に招待してあげたい。
もちろん、代金は私がすべて負担するつもり。
それを二人に話すと、優しく笑って納得してくれた。
話を進めて、メニューも何を提供するのかみんなで話し合って決めていく。
そんなことをしていると、あっという間に夜遅くになってしまっていた。
マコトさんは明日も仕事があるから、先に帰ってもらった。
「さき、お店楽しみですね」
「うん、すっごく楽しみ!」
そんなことを話しながら、私達も帰路へ着いた。
今後、忙しくなりそう!
不安なこともあるけど、楽しみな気持ちの方が大きくて強い。
上手くやっていけるのか不安だけど、私ならきっと出来るから大丈夫。
そしてその1年後。
見事私とハル二人のお店が出来上がり、早速見に行った。
ハルが考えた内装にマコトさんが少しアイデアを足してくれて、すごくいい感じになった。
懐かしさもあってそれでも温かみのある暖色系の店内。
そんなに大きなお店ではないけれど、まるで教室みたいで懐かしかった。
って、私が懐かしがってたら意味ないよね!
「マコトさん、ありがとう!
想像以上でびっくりしちゃいました!」
「いやいや、ハルのデザインが良かったんだよ。
ほら、お父さん呼んであげなよ。
今日は開店前日祝いという事で、私も付き合うからさ!」
「マコトさん、ただ食べたいだけでしょ!」
「ばれた?」
「あははっ!」
皆で笑いながら、お店の準備をしていく。
明日から開店するつもりだったから、駄菓子もメニューの材料も揃っている。
綺麗に準備をして、私はお父さんに連絡を入れた。
場所が分からないって言っていたから、ハルに迎えに行ってもらう事に。
本当は私が行こうと思ったんだけど、さきは店長だからいいんです!って。
だから甘えることにした。
何だか緊張するな・・・お父さん、喜んでくれるかな?
―ガラッ
その時、ドアが開けられてお父さんとハルが入ってきた。
「いらっしゃいませ!」
私は明るく元気な声でお父さんに言う。
お父さんはすごくびっくりした表情をして、店内を見ている。
店内は駄菓子屋そのものだから、驚いてくれたのかもしれない。
お父さんがハルに案内されてテーブルにつく。
さっきから何も言わないけど、大丈夫かな・・・。
「これがお前の店なのか・・・いいじゃないか。
駄菓子屋みたいですごく懐かしい感じがして落ち着く」
「お店の一番最初のお客さんは、お父さんが良かったんだ。
今まで苦労ばかりかけてきたけど、これからは私が頑張るからね。
今日は好きなだけ食べていいよ!」
すると、お父さんが初めて涙を流した。
・・・お父さん?
お父さんが泣くから私まで泣きそうになってしまった。
メニュー表を出して、何が食べたいか聞いてみる。
すると、揚げパンとシチューの献立が食べたいと言ってくれた。
早速ハルが厨房でメニューを作り始めていく。
「父さん、嬉しいよ。
お前がこんな立派になってくれて。
あんまり無理して身体壊すなよ」
「うん、お父さんこそ身体壊さないでよね。
もう若くないんだから」
「馬鹿、父さんはまだ若いぞ」
「あははっ」
お父さんがそう言って笑うから、私も笑った。
喜んでもらえて本当に良かった。
今までとんでもないことをしてきたけど、無事今はこうして真面目に生きている。
ハルと出会えたことや、お父さんが通信制高校を進めてくれたからかもしれない。
メニューが運ばれてきて、お父さんの前に出されて隣の席にも出された。
・・・誰の分だろ?
すると、マコトさんに座るように言われて、お父さんの隣に座った。
「さき、せっかくだからお父さんの隣で一緒に食べなよ。
夕ご飯まだだったじゃないか」
「そうですよ、親子水入らずどうぞ。
私達は向こうにいますから」
「ありがとう」
二人が離れていき、私はお父さんと一緒に食べていく。
通信制高校に通ったことで、私は初めて勉強が楽しいと思えるようになった。
行事だって下らないとか思ってたけど、協力して一つの事をこなすことの大切さを知った。
部活だって一生懸命に頑張って、優勝することが出来た。
今思うと、私を成長させてくれたのは通信制高校だったのかもしれない。
「お父さん、通信制高校に行かせてくれて、ありがとう。
通ったおかげで、私すごく変われたような気がするんだ」
「そうだな、まるで別人みたいに変わった。
いい友達もいるみたいだし、本当に良かったな」
「うん!」
今まで見えてこなかったものが見えてきたおかげで、卑屈にならずに済んだ。
過ちを犯してしまっても、やり直せることを知ったから、もう大丈夫。
行き過ぎていなかったら、いつでも修復することが出来るんだ。
どうしよう、私今すごく幸せを噛みしめてる。
その後、私たちは無事お店を開けて毎日多くのお客さんを集めた。
毎日予約でいっぱいになって、リピーターも増えて忙しくも充実した日々を送ることになった。
皆さんも私のお店を見つけたら、ぜひ立ち寄ってくださいね?