私の名前は神楽さき。
中学からある不良グループに入っていて、今は高校不登校で毎日遊び呆けている。
毎日不良仲間たちと過ごしては、暴れまわったりしてそれはもう楽しい事!
世の中なんかすでに終わっているようなものだし、期待するだけ無駄だし。
だったら、好きなことをして生きた方が絶対にいいに決まっている。
別に頭がいいわけでもないし、これといった特技があるわけでもないしさ。
「さきー、今日どこ行く?」
「ゲーセンでいいんじゃね?」
「んじゃ、行こーぜ!」
私はそう言って、不良仲間であるはなのバイクの後ろに乗った。
もちろん、はなは免許なんか持っていない。
でも、運転できるんだから免許なんか必要ないだろう。
そのまま、仲間たちと一緒にゲーセンへと向かっていく。
相変わらずにぎやかでいい雰囲気を放っている、なんて快適な場所なんだか。
UFOキャッチャーとかシューティングなんかしない。
やるのはいつもメダルゲームと決まっている。
早速、お金をメダルに変えてゲームを始める。
私の運が強いのか、メダルを入れるとジャラジャラメダルが出てくる。
「相変わらず強くね?
何でさきはそんなに運が強いんだよ~!」
「さぁな?」
そう言っている間にも、メダルがどんどん出てくる。
運がいいと思ったことなんか一度もない。
だって、両親はよくケンカをしているし、まるで私は邪魔者扱いだし。
本当に幸せだと思ったのは、小さい頃だけだ。
今はあまり口も利かないし、話すことだって特にない。
冷め切っているというか、関心が無いというか。
私には兄がいるが、これがまた成績優秀で私なんかとは大違いなんだよね。
勉強も出来るし運動だって出来るし、私に勝ち目なんかまったくなくて、本当に同じ兄妹なのか疑問に思うくらいだ。
どうして、私が不良グループに入ったのか。
それは、両親が兄と私を比べることが多くて嫌になったからなんだ。
比べられるのは別に構わない、だってそれは仕方のないことだと思うから。
問題はその言い方にあるんだ。
言い方が昔から少しきつくて、ほめられることも少しずつ少なくなっていった。
私が頑張ってもほめてもらえるどころか、“これくらいできて当たり前”。
それが口癖のようだった。
誰だって嫌になるでしょ、比較されて言い方がきついなんて。
おまけに頑張りを認めてもらえず、出来て当たり前だと言われるなんて。
そんなの私を見てくれているとは言えない。
「さき?」
「あ、ごめん、何か言った?」
「どうでもいいんだけどさ、最近さきの親顔色悪くね?」
「あー、そうかも」
言われてみれば、お母さんの顔色何だか悪かったような気もする。
でも、どうせまた風邪とか引いたんだろうな。
身体だけは丈夫だって本人も前に言っていたし、今だけ具合が悪いんだろう。
すると、他校の不良グループが集まってある男子生徒からカツアゲしているのが見えた。
カツアゲね・・・下らない事してるなー。
私だって不良だけど、カツアゲなんかしない。
だって、大した金額手に入るわけじゃないんだし、脅すだけ無駄だっつうの。
あいつらは、そんなことすらわかんない馬鹿なのかね。
隣にいるはな達も嘲笑している。
それが連中の目に留まったらしく、睨み付けてきた。
私は怯むことなく、連中をじっと見つめ返す。
それくらいじゃ、びくともしないんだよ。
「何見てんだよ!!」
自分から見てきたくせに、何をいきがっているんだか。
本当、馬鹿すぎてどうしようもない。
しかも、人数少ないしまるで不良ごっこじゃないか。
私は別にと言って背を向けて歩き出した。
関わるだけ無駄、さっさと場所を変えて遊んだ方が有意義だ。
「逃げるのか?!」
そう言って、連中のうちの一人が私の方をつかんだ。
頭にきた私は、その手をつかみ地面へと身体を投げつけてため息をついた。
実はかつて幼い頃に空手を習っていたから、こんなこと大したことない。
実力を出してしまえばケガを負わせてしまう。
だから一応手加減はしているつもりだが、当たり所が悪いのかケガをしている。
不良といっても、暴力をふるうのは絶対にしたくない。
それは仲間を守るためにしか、絶対しないようにしている。
「お前ふざけんなよッ!!」
「別にふざけてねーし」
私が何かを言うたびに、連中が絡んでくるのが本当にうざい。
おとなしく引き下がればいいものをさ、弱いくせにグダグダと絡んできやがって。
こういうのが一番めんどくさいんだよね。
仕方なくちょっとした乱闘になり、争うがどう見ても向こうに勝ち目なんかなかった。
みんな擦り傷などを負って、痛そうにしている。
大体な、不良は痛がる姿を見せたりなんかしないんだよ、プライドがあるからな。
それを簡単に見せるあたり、しょせん不良ごっこにしか過ぎないんだよ。
「さて、行こうか」
ちょっとした乱闘が終わり、私たちは警察が来てしまう前にずらかった。
捕まったら厄介なことになるし、また家に連絡されてしまう。
次に私たちが向かった先は、本屋だった。
不良といっても、私たちは少女漫画が好きだったりする。
だから、こうして毎回違う本屋に来ては立ち読みをしていくが、最近は立ち読みが出来ないようにされているから、かなり不便だ。
私は、はなと目配せをして周囲の様子を窺った。
私たちの周りには誰もいないし、はなや仲間たちが監視カメラの位置を確かめる。
その合図とともに、私は何冊かの本を自分のバッグの中へとしまっていく。
そう、これは万引き。
でもいいよね、だって中身が見られないし値段だって高いんだから。
私たちは手短に済ませて、何事もなかったかのように話しながら本屋を後にする。
最近は入り口付近にセンサーがつているところが多いけれど、ここは古めかしい本屋だからそんなハイカラなものは設置されていない。
本当、ここまでやりやすい本屋は初めてだ。
「さき、今日は何冊いった?」
「んー、今日はざっと4冊?」
「マジ、天才的だよね!」
笑いながら、万引きしてきた本を開けてみんなで回し読みをしていく。
これが私たちの過ごし方なんだ。
万引きなんて今に始まったことじゃないし、誰だって一度くらいしたことあるでしょ?
だから大したことなんかないんだ。
悪いと思ったことが無いし、どうしてしちゃいけないのか分からない。
世間はやたらルールばかり私たちに押し付けてきて、嫌々守らされている感じだ。
私は、そんなルールに縛られていたくない。
そして家に帰ると、相変わらずの嫌な雰囲気。
兄がリビングでテレビを見ながら、勉強をしている。
ホント優等生だなって思う。
私はそのまま自分の部屋へと向かって歩いていくと、兄の声が聞こえた。
「どこに行っていたんだ?」
「別にどこだっていいじゃん、関係ないでしょ」
そう冷たく言い返して、自分の部屋へとこもった。
あまり話したくないな・・・。
話すことも特にないし、あれこれ言われるのも嫌だ。
でもね、本当は私だって・・・普通に過ごしたいんだよ。
今の私を作ったのは、家族と周りの人達なんだ。
私だって昔から、こんなに悪かったわけじゃないし万引きしたりなんてなかった。
昔はもっと明るくて周りに友達もたくさんいて、優等生に近かった。
だけど、それをよく思わない連中からいじめられて弱い私はそれに耐えられなくていつしか不登校になってしまった。
今では、私をいじめてきた連中を負かせて不良としての道を歩んでいる。
「下らない・・・」
見返してやろうと思って、不良グループに入り喧嘩三昧の日々。
おかげでちょっとやそっとじゃ負けないくらいに強くなった。
これがいいことなのか悪い事なのか、今の私にはよくわからない。
だけど、別に後悔なんかしていないし下らない高校へ通うくらいなら今の生活の方が楽しくてずっといい。